週末は唐津東松浦歯科医師会主催の講演会がありました。
福岡歯科大学医科歯科総合病院の口腔外科の平木教授をお招きして
「小児から高齢者まで口腔外科関連の最新アップデート」の内容で講演していただきました。
平木教授は院長が研修医時代からお世話になっている先生で、腕前はもちろん、人柄もとても素晴らしい先生です。
今回、唐津まで来て講演していただけるとのことでとても楽しみにしていました。
講演会の内容としましては、
地域の歯医者さんに対して、口腔外科の新しい知識を教えていただくという内容です。
医療は日々進歩しており、治療方針が数年で全く変わってしまうこともあります。
特に口腔外科という分野は、勉強する機会がなかなかないため、とても貴重であり
そして、口腔外科はお体全身と関わりあいがある疾患が多いため、正しい知識が必要になります。
今回は少しだけ、講演の内容をまとめてみました。
1. 外傷について
まずは口の中の処置を行う前に、全身状態が問題ないかを確認することが大切です。
気分不良があれば、まずは大きな病院へ紹介いたしますので受診していただきます。
▼確認するポイント
① 歯が折れていないか(破折)、抜けかけていないか(脱臼)
② 骨折していないか
③ 軟組織の傷があるかどうか
それぞれ診断をして、当院でできるかできないかを判断していきます。
もちろん、必要であれば大きな病院にご紹介します。
▼当院でできる治療
歯の破折、脱臼
唇や皮膚の裂傷
2. 抗血栓療法服薬(血液サラサラの薬)を飲んでいる人の処置
新しい薬も普及しており、2020年に新しくガイドラインができました。
ワーファリンは半減期が長くコントロールもしづらかったのですが、新しい薬(DOAC)は半減期が短く使いやすく、最近普及しているお薬です。
▼血液サラサラの薬は2種類
①抗血小板薬:血小板の働きを抑制 動脈血栓(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)
バイアスピリン、プレタール
②抗凝固薬:凝固系に働きを抑制 静脈血栓(心房細動、不整脈、弁疾患など)
ワーファリン、DOAC(プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ)
▼処置のポイント
処置(抜歯等)後の出血の可能性は高いのですが、基本的には内服を継続して処置を行います。
ただし、十分な止血処置が必要となります。
DOACは半減期が短いために、午後に抜歯をおすすめします。
ロキソニンは出血傾向を増悪するため、投与量は最小限にします。
3. 抗菌薬の予防投与
歯科の抗菌薬の予防投与の第一選択はペニシリン系の抗菌薬です。
→当院ではサワシリンカプセルを投与しています。
単回投与or48時間内の投与が推奨されております。
→サワシリンカプセルを1日3回の1〜2日分処方します。
基本的には感染リスクのない抜歯に抗菌薬の予防投与は必要ありません。
▼当院で抗菌薬を予防投与する場合
親知らずの抜歯
歯ぐきを切開したりする処置
インプラント治療後
4. 薬剤関連顎骨壊死について
ご存知の方も多いかもしれませんが、骨粗鬆症の薬には注意が必要です。
抜歯をしたり、慢性的な炎症では顎の骨が壊死する可能性があります。
口の中には細菌がたくさん繁殖しており、感染を引き起こし、骨が壊死する原因の1つとされています。
以前はビスホスホネート製剤だけが原因とされていましたが、デノスマブ製剤や血管新生阻害薬、免疫調整薬などが増えて薬剤関連学骨壊死MRONJと総称が変更されました。詳しく書くと長くなるので、簡単に記載します。
▼注意する薬(最近は注射製剤が普及しています)
注射:高容量(特に注意が必要)ゾメタ、ランマーク、アレディア
低容量 プラリア、ボナロン
内服:ベネット、ボナロン、フォサマック、アクトネルなど
▼顎骨壊死の発症頻度
高容量:10% 低容量:0.1%
累積投与量が長いとリスクが増加します。
▼抜歯について
予防的休薬はまだ議論中でありますが、基本的には休薬しないで抜歯を行います。
高容量は基本的に抜歯をしない方針です。
できるだけ低侵襲の処置を心がけます。
口腔内を清潔にして処置を行うのが大事と言われています。
▼MRONJの治療法
以前は保存的な治療(抗菌薬の投与や洗浄)が主でしたが、
現在は外科的に手術(顎骨切除)を行うことに徐々に移行しています。
ここ数年でも大きく治療方法が変更したところがあります。
口腔外科の領域はお体全身に関わることも多いため、最新の知識のアップデートが必要だと改めて実感しました。